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2022年 10月 22日 大学で勉強していること

こんにちは、東進担任助手4年の釜田です。今日は、僕が大学で勉強していることについてお話ししたいと思います。僕が属しているのは「東京大学教養学部教養学科地域文化研究分科フランス研究コース」という非常に長大な名前の学科です。同期が少ないのでほぼ個人情報みたいなものですね。そこで何をやっているかというと「地域研究」です。英語だとArea Studies(エリア・スタディーズ)ですね。大まかな理解としては、ある国やある言語圏に属する人々の社会の歴史、政治、思想、経済、芸術、文学などを幅広く研究する、その国の人々の視点を理解することを目指す学問領域を指すのですが、「経済学」や「法学」みたいにはっきりしたディシプリンがあるわけではないので、研究者によって専門分野は様々です。ですから授業も、全てフランス語のテクストを読むことは変わらないのですが、読む内容は歴史に社会に哲学にと様々です。フランス語の力はおかげで結構高まり、自慢みたいで恐縮ですがこの前DELFというフランス政府公認の検定試験でB2という英検で言ったら準1級くらいのをとることができました。(めっちゃ点数ギリでしたが…)このまま勉強して来年か再来年にはフランスに留学したいなあと思っています。  さて、そんな僕の学科にも卒論提出の義務があります。なんと卒論はフランス語で書かなければならず、ひいひい言う毎日です。題材も自分で決めて、そのことに関して教授の意見を聞きながら自分で研究します。僕の場合はミシェル・フーコーという20世紀フランスの有名な哲学者について研究しています。多分倫理の教科書で見たことある人もいるのではないでしょうか?例えば「パノプティコン」の話とか有名ですよね。円形の刑務所で、真ん中に監視塔があり、それぞれの檻の窓から塔の中でだれがいつ見ているかわからないけど、塔からは受刑者が何をしているか丸見え、というジェレミー・ベンサムの考案した監獄の形態のことです。受刑者はいつ何時見られているかわからないので、下手なことができません。そうすると次第に監視の目が「内面化」して、悪いことをしないような方向へ矯正されていきます。わざわざムチを持った看守とかが叱らずとも、自動的に服従する、というわけです。そしてフーコーは18世紀から現在に至るまでの学校や病院、兵舎、工場、刑務所がこの「権力を内面化・自動化させる」性格を共有していると指摘するのです。  まあざっくりと例を出せば上のようなことを考えた哲学者なのですが、僕は彼が最晩年に取り上げた「真理」に関する議論に興味があり、卒論のテーマにしています。最近では「ポスト・トゥルース」とか「ファクトチェック」という言葉が流行しています。つまり、現代政治においては、もはや真理・真実が顧みられない。そしてそれに対抗するため逐一、情報の真偽を確かめようというわけです。なんだか堂々巡りの袋小路に陥りそうです。この考え方の前提になっているのは、どんな情報でもエビデンス=証拠と照らし合わせることで誰でも納得できる絶対的な真実が手に入り、その真実をもとに議論が成り立つという考え方です。しかし、フーコーによれば古代ギリシャにおいて真理とは現在と全く違う形態をとるものだったようです。「真理」という一見意味の明白な言葉でも、その形は常に一定というわけではない。フーコーの仕事の多くは、今私たちの社会で受け入れられているシステムや制度、分類、考え方が時代によって全く異なることを明らかにするものです。全てのものは今の状態が当たり前なのではなく、今の状態になるまでの歴史があるのです。そうすると現在の状況を自明視することができなくなります。しかし逆に言えば現在行き詰まっている問題を解決する、別の考え方を見つけるのにきっと役立つことでしょう。  フーコーはこんなことを言っています。  「哲学ーー哲学の活動、という意味でのーーが思索の思索自体への批判作業でないとすれば、今日、哲学とはいったい何であろう?自分がすでに知っていることを正当化するかわりに、別の方法で思索することが、いかに、どこまで可能であるかを知ろうとする企てに哲学が存立していないとすれば、哲学とは何であろう?」(新潮社『快楽の活用』p.16)  とても含蓄に富んだ言葉だと思います。ある意味、牽強付会ぎみに言うならば、大学での学問とは全てこういったものです。自分が既に知っている教科書的な事実を並べたり演習したり応用するだけではなく、そうではない可能性を考え続けること。高校生の皆さんも自分の興味のある分野で、こういった答えの無い探究ができると良いでしょう。今日のブログを読んだ方が将来の進路を決めるのに少しでも役立つ内容になっていれば幸いです。